■ 品種改良した植物の保護(No.3-1)

最近、国内の農業の存続が危惧される中、いろいろな種類の果物や花等の開発が話題になっていますが、これら植物新品種はどのような法律で保護されるのでしょうか。
実は、これらは「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)」に基づいて改正された「種苗法」という法律で保護されます。
開発者は、農林水産大臣宛に、出願者及び出願品種の名称等を記載した願書、出願品種の育成及び繁殖の方法や出願品種の特性等を記載した説明書、出願品種の種子又は菌株、植物体の写真等を添付して品種登録願を提出することにより、審査を経て植物新品種が品種登録されれば、その登録された新品種を独占的に育成する権利である育成者権という知的財産権が発生します(存続期間:品種の登録日から25年、特定の永年性植物では30年)。 この保護制度は、特許出願により特許権を発生させて発明を保護する特許制度に類似しています。
外国(前記国際条約の加盟国)でも植物新品種を保護するためには、各国ごとに、(好ましくは日本への出願から1年以内に優先権を主張して)所定の出願手続きを行い、その国での植物新品種に関する権利を取得する必要があります。 なお、前記の植物新品種及びそれを含む上位概念に属する新規植物、並びにそれらの育種方法、増殖方法、遺伝子関連技術等は、所要の要件を満たせば、発明(技術的思想の創作)として特許法で保護することが可能であり、この特許法によっても植物新品種に関する知的財産権の保護を検討することが重要です。 (戻る)
 

■ iPS細胞の製造特許(No.2-5)

京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞の授賞理由となったiPS細胞(誘導多能性幹細胞)の作製に関する基本特許(特許第4183742号)が2008年9月12日に成立しています。  この特許については、先ず基本の日本特許出願(特願2005-359537)に基づき優先権を主張して国際出願(PCT/JP2006/324881)がなされ、この国際出願が日本の国内段階に移行して日本の特許出願(特願2007-550210)となり、早期に基本特許を確立するために、この出願から基本技術に係る発明について分割出願(特願2008-131577)がなされ、これが早期の審査を経て特許(特許第4183742号)になるという複雑な経過をたどっています。
 この特許発明は、特許請求の範囲の請求項1に、「体細胞から誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、下記の4種の遺伝子:Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2を体細胞に導入する工程を含む方法」と簡素且つ明確に記載されるように、分化した体細胞を初期化して、胚性幹細胞(ES細胞)と同様の多能性や増殖能を有する誘導多能性幹細胞を簡便かつ再現性よく樹立したものであり、核初期化に関連する遺伝子として24種類の候補遺伝子の中から、既に開発済みの核初期化因子のスクリーニング方法を用いて必須の核初期化因子が見出されました。 (戻る)
 

■ 包装デザインの保護(No.2-4)

最近、亀田製菓の菓子(ピーナッツ入り柿の種)の包装デザインに類似する包装デザインを製造販売会社の宮田及びレスぺ社が同種の菓子に使用しているとして、損害賠償請求の訴訟が東京地方裁判所に提起されました。
知的財産権関係の重要な法律として、特許法や商標法等以外に、「不正競争防止法」があります。 この法律は、文字通り、不正な競争を防止しようとするもので、たとえ商標登録や意匠登録等がされていなくとも、例えば、①他人の「周知」の商品等表示(人名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装等を含む。)を使用して「混同」を生じさせる行為(2条1項1号)や②他人の「著名」(上記「周知」よりも有名の程度が広範囲)な商品等表示を自己の商品等表示として使用する行為(2条1項2号)等(他にも多数列挙される)は、不正な競争であるとして、差止請求や損害賠償の対象になります。  前記の訴訟で、亀田製菓は、自社の商品の周知の包装パッケージと同一又は類似の包装パッケージを宮田等が使用し、混同を生じてさせていると主張しているものと思われます。 (戻る)
 

■ アップルとサムスンの裁判(2012-3)

今回、米国と日本で判決が出ましたが、両裁判の争点がまったく異なってます。米国で出た判決では、画面のスクロールに関する特許(US.7,844,915等)やケースやアイコンの配置等に関するデザイン特許(US. D618,677、D604,305等)の侵害有無が争点であり、これらの点でアップルが勝訴しました。
他方、日本で出た地裁の中間判決では、iPhoneやiPADとPCとの間の音楽等の同期方法に関するアップルの特許(特許第4204977号)の侵害有無が争点であり、サムソンが同期方法として採用している「ファイルサイズ」は、アップルが特許請求の範囲で規定している「メディア情報」には当たらないということで、アップル敗訴となりました。この判決に対して、アップルは、知的財産高等裁判所に控訴することができます。 なお、今後も、米国や日本を含むその他の国で様々な争点での裁判の行方が注目されます。 (戻る)
 

■ 音や香りなども商標登録に?(No.2-2)

日本の商標法では、商標は、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」であると定められていますが、欧米などでは、それら以外に、輪郭のない色彩、位置(標章が商品等の特定の位置に付される)、動き、ホログラム、トレードドレスや目には見えない音、香り、触感、味なども、自己と他者とを識別できる新タイプの商標として、現状はまだ僅かですが登録されている例があります。

日本では、立体的形状の商標(立体商標)が最近導入されましたが、今後さらに、上記のような世界的潮流に対応し、商標の権利範囲の拡大を図るために、特に音、輪郭のない色彩、位置、動き、ホログラムなどを新タイプの商標として導入することが検討されています。 (戻る)
 

■ 特許庁におけるウイルス感染事案について(No.2-1)

特許庁総務部 情報システム室の平成24年2月7日付け発表によりますと、内閣官房情報セキュリティセンターからの情報提供に基づいて特許庁内のすべての端末(約4000台)を調査した結果、2月4日、このうち3台が新種のトロイの木馬型ウイルスを含むウイルスに感染していたことが判明しました。発見されたウイルスは、2月5日中に庁内のすべての端末から駆除済みとなりました。
なお、当事務所では、常に最新の状況でウイルスチェックを行っておりますが、不審なメールやサイトには近寄らないことが何より大切です。 (戻る)